しまむらに向けた株主提案が示す今後のビジョンとは
2025年4月、株式会社しまむらに対する株主提案が注目を集めています。この提案は、カタリスト投資顧問株式会社が投資助言を行うマネックス・アクティビスト・マザーファンド(MAMF)を通じて行われ、国内投資信託の重要な投資先としてのしまむらにエンゲージメント活動を展開しています。ここでは、提案の背景や目的について詳しく解説します。
しまむらの成長とビジネスモデル
しまむらは、独自のビジネスモデルを運営しており、その商品力と販売力は他社に真似できないレベルでの強さを誇っています。堅実な事業基盤を持つ同社は、高いキャッシュフローを生み出す能力も有しています。このような環境の中、MAMFは株主還元の強化を目指して、DOE(株主資本配当率)の引き上げに関する提案を行いました。
2024年5月に開催される株主総会では、DOE5.0%の配当方針を盛り込むことを目指しますが、現時点での想定ではDOE3.0%程度にとどまっています。この状況に対し、MAMFはさらなる株主還元の拡充を求め、対話を続けています。実際、しまむらの手元資金は売上高の5か月分に達し、560億円の余剰資金があります。
必要なキャッシュの見直し
しまむらは、中期経営計画2027において「最大で売上高の6ヶ月分の手元資金が必要」とされていますが、その後4カ月に引き下げた経緯があります。この変更は、経営陣が過剰な現金水準を見直し、キャッシュの積み上げが不要だと判断したことを示しています。しかし、過去の実績を考慮すると、4カ月分の手元資金でもまだ過剰だと言えます。
提案の背景には、株主還元策の強化があり、配当性向60%に基づく年間240億円の配当を計画しています。このような投資方針に関して、MAMFはより高い配当支払いを求めています。
具体的な提案内容
提案の内容は2点に分かれています。まず、剰余金処分の件として、配当金総額が配当性向60%に相当する金額の支払いを目指します。この場合、具体的には1株当たり233円の配当を提案しています。
次に、自己株式取得の件として、年間160億円の自社株買いを提案しています。これによって、株主還元の総還元性向100%を目指す意図が伺えます。
MAMFが提案するこれらは、しまむらがこれまでに見せてきたキャッシュフロー創出能力を最大限に活かすものであるといえるでしょう。2025年2月期の期末決算において、しまむらはROE目標を9.0%以上に引き上げる姿勢を示しましたが、施策の実行にはさらなる株主還元が不可欠です。
経営の柔軟性と今後の展望
しまむらの経営チームは、柔軟に目標を見直す姿勢を持っています。これまでの実績をもとに、ROE9.0%の達成が可能との見解も示されており、株主提案の受け入れがカギとなるでしょう。配当性向60%で160億円の自己株式取得を行えば、2027年のROEは9.2%に達する見込みです。
この提案がどれほど実現可能か、そしてそれが経営方針にどう影響を与えるかが、しまむらの成長にとって重要なポイントです。さらなる経営改善が期待される中、株主の支持が得られるのか注目されています。カタリストは、この提案を契機に株主還元の新たな水準を切り開くことを目指しています。今後の展開から目が離せません。