馬場まり子の最新画集『ひとびと』が描く世界
新潟県出身の画家、馬場まり子の新たな画集『ひとびと』が、2025年12月5日に発売されます。これは、彼女の初画集『ピンク幻想』から9年、素描集『フツウの束の間』から6年を経ての新作。この画集では、馬場が街や田園で目にする人々の日常の一瞬を、独特の視点で切り取っています。彼女にとって「人」というテーマは、日常生活の中で見かけるさまざまな人物のありふれた瞬間を捉えることにほかなりません。
人々との出会いとその表現
画集に収録された作品には、通りを行き交う人々や工事現場で見かける作業員、ひとりで目的を持って歩くサラリーマン、さらにはゆったりとした時間を過ごす高齢者の姿まで、幅広い人間観察が凝縮されています。馬場の描く人物は、半分余白の中に溶け込みながら存在感を発揮し、観る者に穏やかな幸福感を伝えています。この余白は、ただの空間というよりも、「人間社会」という圧から解放された、ゆらぎのような空気を醸し出しています。ここには、彼女自身の人々に対する愛おしさが込められています。
不思議な出現と寓意
馬場の創作の特徴は、時折巨大な果物や野菜が現れる点です。これらはまるで彼女の創作の過程における遊び心の象徴であり、また「なぜ私たちは絵を描くのか?」という永遠の問いかけへと導く重要な要素でもあります。このように、馬場はモチーフや技法を柔軟に変化させながら、独自の世界を展開させています。
消えゆく“ひとびと”のシリーズ
2021年からは、より大胆な実験に取り組む馬場。彼女は、2メートルを超えるパネル上に描かれる不自然なほど小さな人々を探索しています。色彩の背景に溶け込む彼らの姿は、時には透明な存在のように見え、見る者に深い感情を呼び起こさせます。こうした描写は、私たちの生活の儚さを改めて考えさせるものでもあります。
17メートルの圧巻作品《街ゆく人々》
さらに注目すべきは、馬場の代表作と言える17メートルの長さを持つ《街ゆく人々》。この作品は、画廊の壁面を取り囲むように展示され、無数の小さな人々がそれぞれのストーリーを持って描かれています。それは、学校帰りの学生や、忙しそうに歩くサラリーマン、そしてただの留まることのない誰かの姿。馬場の繊細なタッチの中には、私たちの日常の一瞬が丁寧に表現されているのです。
馬場まり子の最新活動
2024年には新たな挑戦として、鉛筆による抽象的な素描を手がける予定です。余白と線の関係性を探究し、シンプルながらも温かみのある作品を生み出すことを目指しています。84歳を迎える馬場は、さらなる高みを目指して絵筆を握りしめているのです。
商品情報
- - 画集名:『馬場まり子画集ひとびと』
- - 発売日: 2025年12月5日
- - 価格: 4,950円(税込)
- - 著者: 馬場まり子
- - 発行: 株式会社求龍堂
- - 仕様: 上製本カバー帯掛け、判型:A4変型(297×225ミリ)、178頁(図版160頁、巻末18頁)、作品点数109点
この最新画集『ひとびと』では、馬場まり子の独自の視点から捉えた人々の姿が、美しくも儚い形で展開されています。ぜひ多くの方々に手に取っていただき、彼女の描く世界を体感していただきたいと願ってやみません。